東京高等裁判所 昭和60年(ラ)565号 決定
執行官保管の仮処分は、引渡し又は明渡請求権に基づく執行を保全するためのものであるから、その被保全権利は、右のような請求権を内容とすることが必要であるところ、抵当権は目的物の使用収益を支配する権利ではないから、単に目的物が権原なく占有されているというだけでは、直ちに抵当権に基づいて右占有の排除を求めることができるものではなく、また、抵当権者は、民法三九五条の規定により解除された短期賃貸借の賃借人に対しても目的物の明渡しを求めることはできないと解するのが相当であるから、抵当権はこの仮処分の被保全権利たり得ないといわざるをえない。なお、登記された短期賃借権に関して処分禁止の仮処分が認められることがあるのは、処分禁止の仮処分の被保全権利は特定物に関する請求権であれば足りるところ、民法三九五条の規定に基づき短期賃貸借が解除された場合には、抵当権者は抵当権に基づく妨害排除請求として右短期賃借権設定登記の抹消登記請求をすることが認められるからであって、このことをもって前記場合に執行官保管の仮処分を認める根拠とすることは許されない。また、このように解しても、差押債権者には民事執行法上一定の保全処分が認められているから、抵当権者が一方的に不利な地位に置かれるものとはいえない。
(舘 新村 赤塚)